(18:00 開場)

金原亭世之介の会 親子で人情噺

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会場詳細

〒171-0021
東京都豊島区西池袋1-23-1
エルクルーセビル地下2階

池袋演芸場
金原亭世之介の会
前売 2,500円
当日 3,000円

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▼ 世之介プロフィール ▼

金原亭世之介 ニコニコチャンネル「東日本橋落語ちゃんねる」

杏寿の「子別れ」と世之介の「富久」

あっという間に令和6年である。コロナ禍であらゆる活動が止まってしまったが時間だけは刻々と過ぎてゆく事を実感する。そして新年を迎え令和6年の「世之介の会」が始まった。

思い返せばコロナ前には世之介の弟子は前座しか存在しなかったが今は金原亭杏寿そして五月には駒平も二つ目に昇進する。コロナも明けいよいよ世之介一門も騒がしくなってきたと言うわけだ。

今回の新春落語会は人情噺の師弟対決らしい。世之介は「富久」杏寿は「子別れ」。

世之介は別として杏寿との「対決」はいささかであると皆さんお考えかと思うが、いやいや先日杏寿の根多下ろしの会「黒門町で逢いましょう」で聴いた「子別れ」は中々であった。

今、活躍する女子落語家の桃花やつる子、こみちなど女目線での古典を演出して話題となっているが、杏寿の「子別れ」は本寸法で真っ向から演じていた。物足りないではないかと思って聞いていたが子供の演出が似合う杏寿らしく、亀ちゃんが出て来てからは尻上がりに噺に勢いが出てきた。

先代馬生の演出の熊に「お前が悪いんだ」と叫ぶ亀の子供のセリフも決して臭くなく。胸に刺さってくる。亀が母親に五十銭を持っていてとがめられるシーンでは、落語の世界に没入させられて気が付けば長屋のあの現場に居る私を感じたほどだ。

今まで聞いた「子別れ」の女房はどこか年配でしっかり者の女房でしかなかったが、杏寿の落語を聞いて初めて熊さんの女房ではなく、亀ちゃんのお母さんなんだと改めて思い知らされた。それも亀の年齢から言って杏寿の容姿も相まって若い綺麗なお母っさんなんだと。

私だけでなくあの時杏寿の「子別れ」をきいた三十人余りの客は新たな「子別れ」に出会えたに違いない。無理に演出に手を加えなくてもまだまだ落語の奥深さを追求できることを実感した日だった。今回お越しいただくお客様も杏寿の「子別れ」の世界にきっと感動するに違いない。

さて世之介の「富久」の幇間持ちの久蔵はとても人間的に可愛い。これは志ん朝のそれに似ているので世之介に聞いた事がある。

世之介は『志ん朝師匠には師匠の家の地下で水割りを飲みながら富久の久蔵について話したことがあるんです。「俺も酒にはだらしないけど、誰かモデルになる酒飲みのを芯に置くと演出しやすいんじゃないか。兄貴(先代馬生)はだめだね飲んでも堅いから。」と言われて、

「志ん朝師匠のところのお弟子さんはどうです」と言ったら「ダメだようちの弟子は。飲んでて可愛くない。志ん五は飲まなくて頑固だし、八朝は何だかわからない。志ん橋は強情、志ん輔は飲めば常人じゃない。右朝は怒るし、志ん上は小言。久蔵のモデルにならないよ。」と笑ったことがありましたが、のちの師匠の弟子になって亡くなった志ん馬が、実は僕の久蔵のモデルなんですよ。

可愛い弟分で本当に酒と女にだらしなかったけど憎めないやつでみんなに好かれてましたね。』と聴いて確かに亡くなった志ん馬を思い出した。

文楽の「富久」志ん生の「富久」は昔から演出の違いを並べ評論されていたが、古今亭の可愛い久蔵の演出を世之介落語で感じて欲しい。そしてまだ二つ目昇進して一年にもみたない杏寿にもエールを贈る。

流派を問わない古典落語の人情噺「子別れ」と「富久」待ってました世之介!金原亭杏寿!

演芸評論家 室輪まだこ