金原亭駒平が二つ目に昇進した。素人の頃から高座を聴いていた天狗連が噺家の二つ目にまでなったのは彼が私にとっては初めてだ。
落語協会は満三十歳までしか今は弟子入りを認めていないので、かれこれ駒平の噺を聴いて七年目となるから、彼も間もなく三十代半ばだ。
その駒平の二つ目昇進口上を今度の「世之介の会」でやると聞いて何だかこちらまでドキドキしている。世之介が出演する会の前座はほとんど務めていたからその成長ぶりは結構見てきたつもりだ。
彼の素直な性格が落語には大きく反映しているので、師匠である世之介から習った噺と他の師匠から習った噺では癖まで高座に現れていて前座らしいと言えばそれまでだがまだまだ駒平落語と言えるところまでは到達していなかった。
駒平に「他で習った落語は師匠に聞いてもらったりしないのか」と尋ねたら「聞いてもらってますよ」と返ってきたので世之介に直さないのか聞いてみたことがあった。
「悪い癖も良い癖も稽古の賜物、稽古に行って良い師匠は私が決めてますから。大丈夫です。ジキに自分のものになりますよ。余程まずい癖は直しますがね。以前小三治師匠に稽古してもらった『大工調べ』を今から四十年以上前の時の稽古の録音で覚えさせました。私はどちらかと言えばテンポの速い喋りですから、あの小三治の大きな間を覚えて欲しかった。
はじめは駒平も戸惑っていたようですが、何かをつかんだんでしょうね。はじめはヘンテコでしたがあの大工調べの与太郎が只の馬鹿ではなく大人の何か一本抜けた馬鹿だと気付いたんでしょうね。それを私が教えた金明竹に応用して、あれから落語全部が一皮むけましたよ。
それから何かにつけて「金明竹」ばかり演ってましたね。結構何か手ごたえがあったんでしょうね。」と言っていた。
そういえば前座の「金明竹」としては群を抜いていたように感じる。
今回の根多は提示されていないが二つ目昇進祝いの「世之介の会」だから二席を駒平が披露すると聞いている。今度の会は見逃せない。駒平の披露口上での黒門付き姿も目に焼き付けたいものだ。
七月「金原亭世之介の会」楽しみにしている。
演芸評論家 室輪まだこ