「天狗連」の意味をご存知の事と思うが、玄人裸足の芸を高座にかける素人連中を「天狗連」と言う。だが、初回から見て来た私にはもうこの「天狗連参る」は素人ではない集団になってしまったように感じる。
そもそも「天狗連」とはプロの噺家の真似をして高座に上がる事であるのだが、この集団は既にプロの演出とはまさに違うステージまで到達している。メンバーの個性がこれまで生かされた落語ならまさに「新しい落語の世紀」になって来ている。
又メンバーの個性も落語の演出に生かされていて流石、色々な演出を企てて来た金原亭世之介のプロデュースらしい。
まずは何と言っても二丁目に生きる日出郎 (blog) の噺に出て来る人物設定がたまらない。
カマであったりオナベだったり。前回の風呂敷の「おサキさん」の本名が「左吉」には腹を抱えて笑った。今回の「辰巳の辻占」は何処に工夫があるのか楽しみだ。
神木優 (blog) は完全に落語をバックにこれから芸能界で生きていく気概を感じ始めた。
もちろん俳優としての舞台が彼のステータスであるのだろうが、すでに全国駆け巡るワンマンショーでは落語をその一つに加えているらしい。彼の才能からすればプロの噺家をも脅かす予感がする。
タレントとしての成長が著しいのが渡辺裕太 (blog) だ。この「天狗連参る」以後の彼のテレビでの露出の貫禄は画面越しでも十分に解る。
落語と言う誰も助けてくれない独演の責任感が彼の糧になっていると私は思う。多分、今回の「天狗裁き」でまた一皮むけた高座を見せてくれるだろう。
砂原健佑 (Profile) の前回「死神」のサゲは度肝を抜いた。
プロの噺家達も「死神」のオチをどうするか?これはひとつの「死神」をやるにあたっての葛藤だからだ。
蝋燭の火が消えて倒れて終わる圓生の演出では寄席のトリでしか噺せないネタを途中でどう繋ぐのか? 彼は前座駒平と出演者の安川純平 (Twitter) に手足を持たせて運ばせたのだ。客席は喝采だった。
その安川純平はテニスの王子様の舞台からの新たな分野への試みだったのだろう。「饅頭怖い」で弾けていた。今回は「出来心」をどう演出してくるのか一番の若手だけに期待大だ。
そして初演のフォーンクルック幹治 (Twitter) 。NHKの教育チャンネル英会話で活躍する母が日本人父がアメリカ人の俳優だ。
まったく色々なキャラクターを登場させる「天狗連参る」だが、よりによって「あたま山」を掛けるとは? どんな高座が繰り広げられるか楽しみだ。
「日出郎が好みの男の子を連れてきているだけ。」と聞いたが、気が付けば二枚目タレントの揃う落語会もめずらしい。
落語ファンも寄席ファンも、芝居ファンもレビューファンも必見の「天狗連参る 其の肆」記憶に必ず残る会と断言する。
■ 演芸評論家 室輪まだこ