第二回『志ん生の孫』
　古今亭志ん生と言う稀有な天才の高座を聴いて落語ファンになった人は多い事と思う。もちろん私もその一人であるから志ん生と言う文字があると何でも興味がわいてくるのである。今回の落語配信「志ん生の孫」もその題名にすっかり魅かれてしまった。思えばすでに志ん生のひ孫どころか玄孫までいる古今亭一門。志ん生の弟子は古今亭志ん駒が亡くなった時点でもう居ない。孫弟子の筆頭金原亭伯楽もすでに八十歳を越え、孫弟子の五街道雲助が孫弟子を持つ。寿命が延びたせいもあって孫と言っても幅広い噺家が揃っているのである。この会も還暦過ぎの世之介、脂ののった真打ち中堅の菊志ん、若手真打ちの志ん五とバラエティに富んでいる。第一回目を聞いて久しぶりに心躍った。寄席以外で古今亭のこの顔付けでちゃんとした一席づつを並べて聴いた事がなかったからだ。ベテランの域に達した世之介の間。力溢れる菊志ん、若手真打ちの初々しい演出。こんな楽しく聞けるものかと驚いた。配信のみというのはこの緊急事態宣言下では仕方ない事だがもったいない会である。すでに第二回が配信と聞いて今からワクワクしている。YouTube映像ではあるが、音もしっかりしていたし、得てしてYouTubeだとZOOMやiPhoneのなんちゃって映像で配信されがちだが画面も美しく堪能できた。今回の演題は世之介が古今亭仕込みの「へっつい幽霊」近ごろ珍しいネタ志ん五の「甲府い」そして楽しみな菊志んの「湯屋番」だ。演題を聞いただけで楽しみでしょうがない。今見るべき落語が此処にあると思う。

演芸評論家　室輪まだこ