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NEWS > 22.7.30 金原亭世之介の会
2022.7.30 18:30 開演(18:00 開場)
金原亭世之介の会
会場詳細はこちら
会場詳細
〒171-0021
東京都豊島区西池袋1-23-1
エルクルーセビル地下2階

池袋演芸場

7月30日金原亭世之介の会


【木戸銭】 前売り:2,500円 当日:3,000円


「粗忽長屋」と「井戸の茶碗」
 観客として落語を聴く時どのキャラクターに自身を投影するかによって面白みが全く変わって来る。粗忽長屋の場合行き倒れを見つけた熊の兄貴分に自分を投影する人がほとんどで、その次が熊だろう。私もそうやってずっと「粗忽長屋」を聴いて来た。三十年ほど前、世之介の「粗忽長屋」を聴いた時、初めて町内で行き倒れの差配をしている男に自分を投影している事に気づいた。以来すっかり世之介の「粗忽長屋」のファンになった。熊の兄貴分から返って来るとんちんかんな返答に右往左往する差配。まさに世之介の演じる兄貴分と私の中の差配がやり取りしているようで大いに笑った。話がそれるが私は漫画も大好きで中でもちばてつやさんが大好きだ。あの方の描く主人公ではない脇役の表情や仕草がたまらないのだ。それは例えば「のたり松太郎」にくっついている爺さんであり、田中関。「ハリスの旋風」のアー坊である。世之介の落語にもそんな端役が良い味を出して出演する。行き倒れを見に来た野次馬がそれだ。野次馬と差配の会話は、ちばてつやの世界観にとても似ていると思う。野次馬の演出につい世之介に聴いた事がある。「あれは私の師匠のギャグです。」と言っていた。そう言えば十代目金原亭馬生の、のほほんとしたセリフまわしは今もたまらなく好きだ。 「井戸の茶碗」は古今亭一門の十八番と私は思っている。志ん生は言うまでもなく志ん朝、馬生どの師匠を聞いてもたまらない。他の一門の若手が高座に掛けているのを聴いたが情けないほど面白くなかった。私は世之介の「井戸の茶碗」では主人公である屑屋や千代田ト斎より高木佐久左衛門が好きだ。世之介は演出でこの若侍に清潔感を持たせている。そう感じさせてくれる噺家は少ない。娘を嫁がせるト斎の心持がすんなり入ってくるのはそのためだ。無駄に笑いを取らず中間の良輔にウケ役をさせ淡々とした佐久左衛門が良いのだと思う。江戸の長屋で繰り広げられる事件の二席今夜はどのキャラクターに私を載せて聴こうか?楽しみにするとしよう。

演芸評論家 室輪まだこ



2022.7.30 18:30 開演(18:00 開場)
金原亭世之介の会
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〒171-0021
東京都豊島区西池袋1-23-1
エルクルーセビル地下2階

池袋演芸場

7月30日金原亭世之介の会




前売り:2,500円 当日:3,000円



「粗忽長屋」と「井戸の茶碗」

 観客として落語を聴く時どのキャラクターに自身を投影するかによって面白みが全く変わって来る。粗忽長屋の場合行き倒れを見つけた熊の兄貴分に自分を投影する人がほとんどで、その次が熊だろう。私もそうやってずっと「粗忽長屋」を聴いて来た。三十年ほど前、世之介の「粗忽長屋」を聴いた時、初めて町内で行き倒れの差配をしている男に自分を投影している事に気づいた。以来すっかり世之介の「粗忽長屋」のファンになった。熊の兄貴分から返って来るとんちんかんな返答に右往左往する差配。まさに世之介の演じる兄貴分と私の中の差配がやり取りしているようで大いに笑った。話がそれるが私は漫画も大好きで中でもちばてつやさんが大好きだ。あの方の描く主人公ではない脇役の表情や仕草がたまらないのだ。それは例えば「のたり松太郎」にくっついている爺さんであり、田中関。「ハリスの旋風」のアー坊である。世之介の落語にもそんな端役が良い味を出して出演する。行き倒れを見に来た野次馬がそれだ。野次馬と差配の会話は、ちばてつやの世界観にとても似ていると思う。野次馬の演出につい世之介に聴いた事がある。「あれは私の師匠のギャグです。」と言っていた。そう言えば十代目金原亭馬生の、のほほんとしたセリフまわしは今もたまらなく好きだ。 「井戸の茶碗」は古今亭一門の十八番と私は思っている。志ん生は言うまでもなく志ん朝、馬生どの師匠を聞いてもたまらない。他の一門の若手が高座に掛けているのを聴いたが情けないほど面白くなかった。私は世之介の「井戸の茶碗」では主人公である屑屋や千代田ト斎より高木佐久左衛門が好きだ。世之介は演出でこの若侍に清潔感を持たせている。そう感じさせてくれる噺家は少ない。娘を嫁がせるト斎の心持がすんなり入ってくるのはそのためだ。無駄に笑いを取らず中間の良輔にウケ役をさせ淡々とした佐久左衛門が良いのだと思う。江戸の長屋で繰り広げられる事件の二席今夜はどのキャラクターに私を載せて聴こうか?楽しみにするとしよう。

演芸評論家 室輪まだこ







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