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NEWS > 22.10.29 金原亭世之介の会
2022.10.29 18:30 開演(18:00 開場)
金原亭世之介の会
会場詳細はこちら
会場詳細
〒171-0021
東京都豊島区西池袋1-23-1
エルクルーセビル地下2階

池袋演芸場

10月29日金原亭世之介の会


【木戸銭】 前売り:2,500円 当日:3,000円


「柳田格之進」と「へっつい幽霊」
 今は名人が居ないと落語ファンは嘆くが私はそうは思わない。昔の芸人に比べ落語の上手さではけっして今の噺家さん達は劣っていない。どちらかと言えば名人を後押しするお客様が少ないと言った方が正しいのかもしれない。今の世の中情報量が多すぎて比べる対象が落語だけに止まらず目移りするのも原因の一つかもしれない。まあそれでも芸人が魅力的で在りさえすれば良いのだが、デジタル化も良し悪しだ。iPhoneで昔の名人たちをタダで聴く事が出来るわけで。それでも現役の噺家にはこの殻を破って欲しいものだと常々思う。金原亭世之介を一度聴いて欲しい。私は江戸時代から続く伝統芸である落語を見続けて半世紀になる。その間それぞれの時代に名人が至極の芸を演じ、聞けば聞くほど新たなる発見とその奥深さを魅せつけられた。それは聞き手の成長と比例して往く落語特有の世界感だと思う。そして聞き手の個々の人生と同調する噺家に出会えた時その落語は覚醒することに気づかされた。多くの落語ファンに漏れず志ん生の芸にはまり、馬生、志ん朝を聞き、今は世之介を追いかけている。勿論先代金馬、文楽、談志、小三治も大好きだったが古今亭の噺を聞くとぞくぞくするのだ。今回の「柳田格之進」は志ん生が講談師時代に落語に直した傑作人情噺と聞いていたが、もとは三代目柳枝が講釈から起こした噺で志ん生がものにして古今亭のお家芸としていた。古今亭志ん朝が亡くなって十八番とする師匠が居なくなってからは、どの一門も演じている。それだけ噺家に魅力的な噺なのだろう。この噺は志ん生より先代馬生の演出が私は大好きだった。志ん生の自由奔放さを受け継ぎながら後半の娘を一言「まるで老婆だ」と言う格之進の演出は今でも秀逸だと思う。しかし決して絞めすぎない笑いをちりばめた演出を世之介も踏襲している。志ん朝と柳田格之進の話をした時「この噺はまだまだこれから作っていきたい」と言っていたがこの世を去った。何度か聴いている世之介の作品だが今回の「柳田格之進」に新たな世之介の世界観を期待したい。「へっつい幽霊」は三遊派と古今亭に二分される怪談噺だが古今亭の噺は、ばくち打ちの丁の目の半二と幽霊長兵衛にスポットを当てて短く演出されている。世之介は若い頃からこの噺が好きで各所で聴く事が出来る。寄席では十五分ほどに仕立て上げていて寄席の高座でも何度か聞いた事がある。幽霊の登場に効果音のドロを入れているのは世之介だけであったが近ごろ若手の噺家がドロを入れる様になった。世之介に聞いてみたら「私が稽古した後輩じゃないですか?」と言っていた。世之介は志ん朝から受け継ぎそしてまた後輩へ繋がってゆく。伝統文化の素敵さだ。幽霊の手つきが気になって世之介に聴いた事があったが、これは先々代の蝶花楼馬楽から「応挙の幽霊」を稽古して貰った時に教わったと世之介から聴いた。確かに他の噺家とは一味違う手つきだ。今回もこの幽霊を是非味わってもらいたい。世之介の弟子たちも高座に上るなら金原亭杏寿を注目して欲しい。来春二つ目昇進の決まった前座がどう変化していくかこれはまた楽しみなのだ。

演芸評論家 室輪まだこ


2022.10.29 18:30 開演(18:00 開場)
金原亭世之介の会
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東京都豊島区西池袋1-23-1
エルクルーセビル地下2階

池袋演芸場

10月29日金原亭世之介の会




前売り:2,500円 当日:3,000円



「柳田格之進」と「へっつい幽霊」

 今は名人が居ないと落語ファンは嘆くが私はそうは思わない。昔の芸人に比べ落語の上手さではけっして今の噺家さん達は劣っていない。どちらかと言えば名人を後押しするお客様が少ないと言った方が正しいのかもしれない。今の世の中情報量が多すぎて比べる対象が落語だけに止まらず目移りするのも原因の一つかもしれない。まあそれでも芸人が魅力的で在りさえすれば良いのだが、デジタル化も良し悪しだ。iPhoneで昔の名人たちをタダで聴く事が出来るわけで。それでも現役の噺家にはこの殻を破って欲しいものだと常々思う。金原亭世之介を一度聴いて欲しい。私は江戸時代から続く伝統芸である落語を見続けて半世紀になる。その間それぞれの時代に名人が至極の芸を演じ、聞けば聞くほど新たなる発見とその奥深さを魅せつけられた。それは聞き手の成長と比例して往く落語特有の世界感だと思う。そして聞き手の個々の人生と同調する噺家に出会えた時その落語は覚醒することに気づかされた。多くの落語ファンに漏れず志ん生の芸にはまり、馬生、志ん朝を聞き、今は世之介を追いかけている。勿論先代金馬、文楽、談志、小三治も大好きだったが古今亭の噺を聞くとぞくぞくするのだ。今回の「柳田格之進」は志ん生が講談師時代に落語に直した傑作人情噺と聞いていたが、もとは三代目柳枝が講釈から起こした噺で志ん生がものにして古今亭のお家芸としていた。古今亭志ん朝が亡くなって十八番とする師匠が居なくなってからは、どの一門も演じている。それだけ噺家に魅力的な噺なのだろう。この噺は志ん生より先代馬生の演出が私は大好きだった。志ん生の自由奔放さを受け継ぎながら後半の娘を一言「まるで老婆だ」と言う格之進の演出は今でも秀逸だと思う。しかし決して絞めすぎない笑いをちりばめた演出を世之介も踏襲している。志ん朝と柳田格之進の話をした時「この噺はまだまだこれから作っていきたい」と言っていたがこの世を去った。何度か聴いている世之介の作品だが今回の「柳田格之進」に新たな世之介の世界観を期待したい。「へっつい幽霊」は三遊派と古今亭に二分される怪談噺だが古今亭の噺は、ばくち打ちの丁の目の半二と幽霊長兵衛にスポットを当てて短く演出されている。世之介は若い頃からこの噺が好きで各所で聴く事が出来る。寄席では十五分ほどに仕立て上げていて寄席の高座でも何度か聞いた事がある。幽霊の登場に効果音のドロを入れているのは世之介だけであったが近ごろ若手の噺家がドロを入れる様になった。世之介に聞いてみたら「私が稽古した後輩じゃないですか?」と言っていた。世之介は志ん朝から受け継ぎそしてまた後輩へ繋がってゆく。伝統文化の素敵さだ。幽霊の手つきが気になって世之介に聴いた事があったが、これは先々代の蝶花楼馬楽から「応挙の幽霊」を稽古して貰った時に教わったと世之介から聴いた。確かに他の噺家とは一味違う手つきだ。今回もこの幽霊を是非味わってもらいたい。世之介の弟子たちも高座に上るなら金原亭杏寿を注目して欲しい。来春二つ目昇進の決まった前座がどう変化していくかこれはまた楽しみなのだ。

演芸評論家 室輪まだこ







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