『天狗連参る』は落語に興味のあるタレント、芸能人たちがプロの噺家と同じ寄席の高座で落語を喋ってみたいという好奇心から始まった落語会である。
コロナ禍で何度も延期されながらも今回で8回目を迎える。別館と称して開いた落語会を加えれば20数回を数える老舗の天狗連の会だ。
中心は日出郎(天狗連志ん進 / blog)で週刊誌やテレビ番組では世之介に入門して「日出郎、落語家に転職」とまで言われ、天狗連でありながらだいぶ落語界に染まった芸能人の一人である。
入門と言えば日出郎に連れられてきて天狗連に参加して世之介に弟子入り。本物の噺家になってこの5月に晴れて二つ目昇進する駒平を忘れてはならないだろう。
この「天狗連参る其の捌」を最後にあと10日もすれば紋付羽織で寄席の高座を務める若手有望の噺家に成長した。「天狗連参る」出身が上がる前座最後の高座も応援してほしい。
今回参加メンバーは2020年に世之介から高座名を貰った「天狗連参る」の強者ぞろい。
まず天狗連志ん進(日出郎)は何度か手掛けた根多「垂乳根」を披露する。日出郎はセリフ覚えが悪いという割に言い立ての多い「金明竹」や「厩火事」などの噺を結構喋っていて、困った挙句のアドリブはさすがゲイ能の世界を渡り歩いてきた重チンだ。
自分の世界を持っているタレントはやはり観客を魅了させる力があるものだ。
天狗連志ん喜(神木優)は、一時期世之介に入門していた逸材だが天狗連に戻って今は俳優としてその力を発揮している。
今回は「天狗裁き」を披露するのだが、プロの水に浸かった期間のある技量は今回の目玉である。その違いをきっと皆さんは感じる事と思う。
天狗連俳遊(渡辺裕太)は前回「天狗連参る」の高座が尊敬する父、故渡辺徹氏の最後に見た俳遊の舞台であったそうだ。その時大笑いしていた父が間違いなく今回の高座も後押ししてくれるに違いない。
私の贔屓目かもしれないがあのあと浅草公会堂で彼が演じた「転失気」は紛れもなくプロの高座だった。今回は「鈴ヶ森」題名は何か重々しいが滑稽噺で、皆さんをきっと楽しませてくれるだろう。
天狗連鳩太郎(フォーンクルック幹治 / Twitter)は昨年世之介と共に英語落語をフジテレビや八重洲のホテルで披露して、SNSを通じて世界に落語を披露している。
フジテレビではエマニュエルアメリカ駐日大使ら各国大使の前で「お菊の皿」を英語で演じ好評を得た。今や英語落語の演者のひとりとして活躍している。
今回は世之介の十八番のひとつ「時そば」を掛ける。どんな英語展開があるのか楽しみのひとつだ。
玄人はだしの面々が久しぶりに「東洋館」に集合する。何をおいても駆けつけなければ絶対損をする興行5月9日の『天狗連参る』を首を長くして待っている。
■ 演芸評論家 室輪まだこ