各分野で活躍するタレントが勉強の一環として本当の寄席で高座に登がってみたいと言う事から始まったのが「天狗連参る」だと聞いた。
第一回からすべて私も見ているが今回で第九回を迎えるそうだ。
ゲストの金原亭駒平は初回に参加した舞台役者だが、そのまま世之介に入門して六年の前座修業を経てプロの噺家になった。
今や二つ目の有望株として活躍している。そしてこの会を牽引する「天狗連参る」出身の本物の噺家が育ったわけだ。
「天狗連参る」は「別館」と称して年間多い時は五、六回の公演を開催しているが、それに加えてメンバーは各所で落語の高座にも上がって活躍している。
そもそも「天狗連」とは江戸時代から特にプロはだしで落語を演じる素人を指した言葉で、あの古今亭志ん生も当時は天狗連だった。今なら大学の落研当りがそれにあたるものだ。
メンバーは高座名もそれぞれ天狗連の亭号で持っている。
日出郎(天狗連志ん進 / blog)の今回の根多は「時そば」。「天狗連参る」では初出しだが別館で一度聞いた事がある。
日出郎はご案内のとおり二丁目のジェンダーであるがその口調が落語家に合っているのか、近頃高座での喋りがさまになってきた。
マスコミで「日出郎落語家に転職」とまで書かれたことがあって、当人はかなり喜んでいたらしい。毎回のはちゃめちゃな高座は今回も一番の楽しみだ。
天狗連志ん喜は世之介に数年弟子入りしていた事がある。今は神木優として役者に戻ったが、お囃子の太鼓も叩けるし高座の所作もふくめ落語家一通りのことは学んだからその実力は本物だ。
今回は「片棒」。お囃子の言い立ては落語家修業で覚えた感覚を存分に演じられる場所だ。今回の志ん喜の落語のひとつの見せ所だろう。
タレントの天狗連俳遊(渡辺裕太)は近頃落語でも引く手数多だそうだ。先年亡くなった実父の渡辺徹さんの「徹☆座」で母の榊原郁恵さんと主催を引き継ぎ、サンドイッチマンやナイツと並んで今年も落語で出演している。
あのメンバーと並んでの高座は、否が応でも度胸がついたに違いない。その高座姿はかなり板についてきたように感じる。
今回の出し物は「後生鰻」古今亭志ん生が晩年寄席などでさらっと掛けたこの根多をどうこなすか期待だ。
天狗連鳩太郎(フォーンクルック幹治 / Twitter)は今回「動物園」。フォーンクルック幹治(ミッキー)としてBAYFM78で「~洋楽劇場~SATURDAY STRUT」という番組を持つ売れっ子DJでもある。
バイリンガルの本格的落語を喋れる逸材のタレントで、英語での高座も定評で各国大使館員を集めた落語と日本酒のイベントでの英語落語「お菊の皿」を見たがこれは圧巻だった。
「動物園」は新作だがすでに古典の粋に入った名作である。どんな演出で楽しませてくれるのか今からワクワクしている。
そして今回初お目見えは前田隆成。若くして劇団を主宰し台本、演出、主演までこなす多彩な役者で映画ではレッドカーペットも体験している。
落語家への憧れがあって上京して今も高座に上がっていて是非挑戦してみたいとプロデュースの世之介に頼んだらしい。
キンケロシアターで彼の「鮫講釈」を一度聞いたことがあるが小柄なわりに勢いがあった記憶がある。
「明烏」が今回の根多で名人上手が手掛けた噺をどこまで演じられるのか楽しみにしている。
まだこの公演を見たことのない方々も何度かご覧になったお客さまも是非足を運んでもらいたい。落語の新たな一面と彼らの才能を間違いなく感じるに違いない。
■ 演芸評論家 室輪まだこ
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